成績アップの秘訣~基礎と実践のバランス「中学理科#108~質量のある滑車を使った仕事~」 勉強が好きになる小中高生向け学習塾「札幌自学塾」 

 

 

 

 

 

前回 滑車を使った仕事

 

 

 

1.動滑車

●動滑車

 

天井や壁、床などに固定されていない滑車。

 

 

 

 

たとえば↓の図のように2kgの物体をつるしているとします。

 

 

 

 

 

これを天井と手の二か所で支えています。

 

よって天井に10N、手に10Nの力が加わります。↓

 

 

 

 

 

このように動滑車では

 

手で引く力は物体の重力の1/2倍

 

となります。

 

 

 

その代わり

 

手で糸を引く距離は物体を持ち上げる距離の2倍

 

となります。

 

 

 

 

しかしここまでは滑車の重量や質量は無視して考えていました。

 

 

 

現実の滑車には質量や重さがあります。

 

 

 

では滑車の重さや質量を考慮すると何が変わるのでしょうか?

 

 

 

 

↓の装置で滑車が1kgの重さであったとします。(物体の重さは先ほどと同じ2kgです)

 

 

 

 

このとき糸には物体の重さ20Nに加えて、滑車の重さ10Nも加わります。(合計で30N)

 

 

この30Nを天井と手の二か所で支えています。↓

 

 

 

 

よって天井に15N、手に15Nの力が加わります。

 

 

 

 

このように動滑車に質量がある場合はその分、手で引く力は大きくなります。

 

 

 

手で糸を引く距離は、動滑車の重さの有無に関係なく変わりません。

 

持ち上げたい距離の2倍を手で引く必要があります。

 

 

 

 

例題

下の図のように4kgの物体を2kgの動滑車につるした。

 

糸の一端を手で引き、物体を3m持ち上げたい。

 

このとき、あとの問いに答えなさい。

 

ただし100gの物体にはたらく重力を1Nとする。

 

 

 

 

(1)手で糸を引く力は何Nか。

 

(2)手で糸を引く長さは何mか。

 

(3)手がした仕事は何Jか。

 

(4)4kgの物体がされた仕事は何Jか。

 

 


 

 

 

【解答】

 

 

(1)

 

物体の質量は4kg。

 

滑車の質量は2kg。

 

 

よって糸には合計で60Nの力がはたらいています。

 

 

これを天井と手の二か所で支えるので・・・↓

 

 

 

 

手で糸を引く力は30Nとなります。

 

 

 

 

 

(2)

 

物体を3m持ち上げるならば、糸をその2倍引かなければなりません。

 

これは動滑車に重さがあろうとなかろうと関係ありません。

 

 

よって手で糸を引く長さは6mです。

 

 

 

 

 

(3)

 

仕事は次のように求められます。

 

 

  仕事(J) = 力(N) × 力の向きに動いた距離(m) 

 

 

 

先ほどの(1)、(2)より

 

 

手で引く力=30N

 

手で引く距離=6m

 

 

 

とわかっているので

 

 

 

  仕事(J)=30N×6m=180J

 

 

 

 

よって手がした仕事は180Jです。

 

 

 

 

 

(4)

 

仕事には「物体のエネルギーをどれだけ変化させたか」という意味があります。

 

 

 

この例題では40Nの物体を3m持ち上げています。

 

 

 

持ち上げるということは位置エネルギーが増加します。

 

 

 

※位置エネルギーは次の公式で求められます。

 

  位置エネルギー(J)=重さ(N)×高さ(m)

 

 

 

 

よってこの問いでの物体の位置エネルギーは

 

 

  位置エネルギー(J)=40N×3m=120J

 

 

 

増加しています。

 

 

 

そのため物体は120Jの仕事をされたということになります。

 

 

 


 

 

 

(3)と(4)の答えを見比べましょう。

 

手がした仕事=180J

 

物体がされた仕事=120J

 

 

 

「手がした仕事が180J」を言い換えると「手が与えた位置エネルギーが180J」です。

 

しかし物体が得た位置エネルギーは120J。

 

 

 

「手が与えた位置エネルギー」と「物体が得た位置エネルギー」が一致せず、60Jの差があります。

 

 

 

これは、手が位置エネルギーを与えた相手が「4kgの物体」だけではないからです。

 

 

 

 

手が持ち上げたのは「4kgの物体」のほかに「2kgの動滑車」があります。

 

 

 

 

つまり手は動滑車にも位置エネルギーを与えた(=仕事をした)のです。

 

 

 

 

2kgの動滑車にはたらく重力は20N。

 

この動滑車を3m持ち上げたので、位置エネルギーは

 

 

  位置エネルギー(J)=重さ(N)×高さ(m)=20N×3m=60J

 

 

増加しています。

 

 

これが先ほどの差にあてはまります。

 

 

 

 

- POINT -

 

・問題文に「動滑車の重さを考えないものとする」と書かれていない場合は要注意。

 

→ 動滑車の重さを考えなければいけないことがある。

 

・動滑車に質量がある場合、物体がされた仕事=手がした仕事とはならない。

 

→ 手は動滑車にも仕事をしているため。